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あきらめないで、うつ病
- 2016/1/22
- 市原版, シティライフ掲載記事
国民の5人に1人は生涯に精神疾患に罹患している、というデータがある。中でも、うつ病は予防することが困難な、ありふれた病気。社交的で明るい性格であっても、誰もがかかる可能性を持っているのだ。
昨秋、市原市保健センターで市原市障がい者支援課主催の講座『精神疾患勉強会 うつ病について』が行われ、約60名が参加した。講師は市内姉崎にある精神科・心療内科クリニック院長の林竜介さん。
漫画家、細川貂々(通称テン)が、うつ病になった夫(通称ツレ)との療養生活を漫画に著した『ツレがうつになりまして。』の内容を例として紹介しながら「うつ病って何?」、「ちゃんと治る病気なの?」など、うつ病患者とその家族が気になる疑問を解消していった。
真面目で几帳面な性格のツレは、弁当に入れるチーズの種類やネクタイを曜日によって決めているような人。仕事も完璧にこなさないと気が済まない。だが陽気で楽観的なタイプでもあった。ある年、勤務先の会社が大幅なリストラを実施、ツレは残ることができたが仕事は超多忙に。睡眠の質が落ち、食欲も低下、元気がなくなり仕事でもミスが増えてきた。ついにテンに向かって「死にたい」と弱音を漏らす。精神科診療所を受診すると、うつ病と診断。療養生活に入る。「うつ病は、神経伝達物質であるセロトニンなどの分泌が極端に少なくなる脳の故障。抗うつ剤をきちんと服用すれば治ります」と林さん。支える家族は「頑張れ」などと不用意に励まさず、家事などの負担を減らしてあげながら普段通り接することが大事。
退職して療養生活に入ったツレは、家でゴロゴロして過ごすことに「世間様に申し訳ない」と罪悪感を抱いた。テンは元来、悲観的で愚痴っぽい性格だが自分も一緒に落ち込んではいられないと明るく振る舞った。漫画家独特のユーモアで「世間とは関わっていないのだから気にするな」と言ったり、楽しくゴロゴロする術を教えたりした。薬の効果もあり、改善と悪化を繰り返しながらも自信をとり戻し、よい状態であることが増えていった。林さんは「うつになった原因を考えても仕方がない。現在に目を向け、これからどうするかを考えることが大切。早めに専門医を受診し、治療を始めることです」と説く。
約3年を経てツレの症状は安定、薬物治療は終了した。そのあとツレは、うつ病体験談の講演依頼を引き受けたりテンのマネージメント会社を立ち上げるなど人生の軌道修正をはかることができた。
このように、「ストレスのたまる生活を小休止し、うつ病を治す過程で人生がよい方向に変わっていく人も多い」とのこと。
自身が、うつ病を患っている参加者も多く「治る病気だとわかって安心した。根気よく薬を飲み続けてみます」との声が聞かれた。
市原市障がい者支援課では毎月1回、『こころの保健福祉相談』を行っている。気軽に相談してみては。
問合せ 市原市障がい者支援課
TEL 0436・22・1111