第10回全国高校生歴史フォーラム学長賞受賞

日本点字を生んだ石川倉次(くらじ)の等身大の姿に共感
市原中央高等学校 歴史研究部

 平成28年11月、第10回全国高校生歴史フォーラム(奈良大学・奈良県主催)において応募98校のなかから、市原中央高校歴史研究部が最高賞に当たる学長賞に選ばれた。研究テーマのタイトルは、『明治から現代に残された18歳の日記|日本点字の父、石川倉次の若き日に迫る』。市原市に縁のある石川倉次はフランスで発明された6点点字の研究と工夫を重ね、日本点字を生み出した偉人。伝記や彫像も多く残されている。激動する明治期に生きた倉次の18歳の日記や雑記帳を読み、同年代の高校生が考察した。
 インタビューに答えたのは、17歳の津曲(つまがり)夏海さん、上代瑞聖(かじろみずき)さん、神谷(こうや)百合子さん、橋本一樹くん。津曲さんは千葉県文書館で「たまたま読んだのが倉次の18歳の日記でした」と研究に取り組んだきっかけを話す。昨年6月、選挙権の満18歳引き下げが施行されたことも後押しした。
 安政6年(1859年)、静岡県浜松の武士の家に生まれた倉次。10歳で千葉県に移り住み、16歳で鶴舞小学校を卒業と同時に同校に採用され教える立場になり、教員検定試験合格後は長南町にあった水沼小学校に赴任する。ところが、明治10年(1877年)、市原市鶴舞に暮らしていた18歳の倉次は小学校を退職し、新聞記者になるため友人と上京する。その後、新聞記者になることをあきらめ、茂原小学校などで教鞭を取り、28歳で盲唖学校の教師として、視覚障がい者教育に身を投じることになる。
 東京行きの日記を示し、「新聞記者になることは最終目標ではなかった」と研究レポートは記す。倉次は「学問の世界を目指す志を持ちながら、伝記では美化しにくい、友達との諍いや迷いがあり、自分が懶惰(らんだ)(怠惰)だといった悩みを有していることが分かった」という。同時代の森鴎外、軍人の秋山好古(よしふる)、当時の小学校教員や新聞記者の立場、西南戦争なども挙げ、武士の身分に安住できない時代に悩みながらも「私情に流されず進んでいく覚悟を持つに至った」とレポートは捉える。
 日記は倉次直筆のカタカナまじりの古い文書。神谷さんは「こんなの読めるのかなと不安でした」。しかし、顧問の川﨑史彦教諭の手助けを受け、読み進むうちに「小学校の授業で習った人物と実際は違っていました」と作り上げられた偉人像とのギャップを知る。上代さんも「生々しい心情やその日にあったことが書かれていて、友人関係や進路に悩む今の私たちと変わりませんでした」と共感する。津曲さんと橋本君も同じように感じたが、「いろいろ興味を持っていて、好奇心も旺盛。自分も大人になったら社会に出て役に立つ人になれるかもしれないと思えました」、「いつかは自分も何かを作り出せる大人になれると希望を持ちました。歴史を学んで、世の中が変わるような大きな出来事があったとき勇気を持って立ち向かいたい」と等身大の倉次を知り、自分たちの未来と重ね合わせた。
 奈良大学での発表当日は「緊張しました」と部員たち。しかし、川﨑教諭は「フィールドワークで訪ねた倉次の上京ルートを、パワーポイントを駆使して解説するなど歴史番組を見ているようでした」と研究調査内容だけでなく部員たちのプレゼンテーション力も評価されたと喜ぶ。優秀賞5校の発表のあと、学長賞に自分たちの高校の名前が読み上げられた瞬間、部員たちは「マジ、信じられない」と驚いたそうだ。
 翌日は大学の文化財や地理の専門家の案内で史跡を巡った。「歴史の本拠地奈良での貴重な体験でした」と部員たち。「東大寺では時代ごとの修復跡について大仏の間近で説明を受ける得難い機会でした」、「昔の暮らしに合わせ地形や自然環境を利用した街づくりをした先人の知恵を知りました」と専門家の説明を目を輝かせて聞いたようだ。
 現在部員が8名いる歴史研究部は平成27年度に創部されたばかり。部員たちは「研究ができる機会があるのは幸せ。無名の人たちの積み重ねで作られた歴史に興味があります」、「昔の暮らしの痕跡が残っているのが面白く、調べるのが楽しい」と探求心旺盛。「未来をより良い方向に進めるため、過去を知り、現代のニュースがどうしてこうなっているのか解きほぐしてみたいです」と歴史研究の面白さをハキハキと語った。今後は6月の文化祭に向け、それぞれ個人の研究に打ち込むそうだ。

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