房総往来

対岸の無人島
山里 吾郎

 テレビの影響もあるのだろう、無人島ブームだ。海に囲まれた島国。海上保安庁によれば周囲100m以上の日本の島は約6800カ所を数える。そのうち9割以上にあたる6400カ所が無人島だという▼もちろん身近な東京湾にも存在する。千葉沿岸ではかつて「鯨が回遊した」と言われる鋸南沖の浮島。富津市沖の第1・第2海堡もそうだが、こちらは防衛目的に造成された人工島で現在は勝手に立ち入りできない▼一方、対岸の横須賀市沖には同様に要塞として使用されていた猿島がある。こちらは自然島で、ブームも手伝い観光地化している。昨年の初冬、小旅行の一環でここに上陸した▼早朝の出発、薄日は射しているものの北風。このまま日中も冷え込むのか、まして目的地は海路だ。同行の9人は思い思いに防寒着をまとい、アクアライン経由で対岸を目指した▼横須賀に到着したのは9時半。歩いて三笠桟橋へ。ここには日露戦争で活躍した連合艦隊の旗艦「三笠」が据え付けられ、軍港観光のシンボル的役割を果たしている▼その横に接岸されている小型の客船に乗り込み、激しい波風にさらされながら約10分の船旅。船上からは小さく見えた島も上陸してみると周囲1.6㎞、それなりの大きさだ▼サルの生息地ではなく、島名は日蓮伝説に由来するという。江戸時代から砲台が築かれた要塞の島で、5座の砲台跡、弾薬庫、レンガのトンネルなど貴重な歴史資料が残存、国史跡に指定されている▼標高約40m。急傾斜を登るのは骨が折れるが、対岸には房総半島の雄姿も。その一角に猿島同様、首都防衛のために造られた第1・2海堡を望むことができた。

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