自分らしさを見つけて

 市原市在住の陶芸家、小原えり子さん(67)は3月に開催された第58回東日本伝統工芸展で念願叶っての入選を果たし、作品となる鉄彩鉢を手に笑顔を浮かべた。「私が陶芸を始めたのは平成4年のことです。当時、夫の転勤で岡山県倉敷市に住んでいましたが、土地柄的に焼物を楽しむ方が多く、子ども達の通う小学校のPTAが主催する一日体験に参加したことがきっかけでした」と、振り返る。 自らの手で土をこね、形作る過程の面白さに引き込まれ、そのままPTA陶芸クラブに入会した。その後、家族と共に千葉市へ移り住んだ小原さんに転機が訪れたのは平成8年だった。「娘が高校生になり、陶芸を続けたいなと思っていた時、朝日新聞のコラムで陶芸家の神谷紀雄先生が書かれた記事を見つけました。文面から感じる先生と教室の雰囲気に惹かれて、ここで習いたいと強く思った」という小原さん。
 偶然にも、千葉市に住む友人から神谷さんが近くに住んでいると聞き、まるで導かれるように彼の教室の門を叩いた。それから22年。今も同じ教室に通い続けている理由は、神谷さんの指導の他に、教室でできた仲間の存在がある。常に『陶芸で自分らしさを見つけることに挑戦して』という神谷さんの指導。食器や置物など多くの作品を生み出し続けてきたが、小原さんが『自分らしさ』を見つけるまでには時間がかかった。
 「千葉市展や県展に出品するようになって、見栄えのある大きな作品に取り組み始めました。でも、全国的かつプロの作品も募る工芸展になると、ずっと入選できなかったんです。そんな時は、教室の友達に励まされたり、刺激し合ったりしてきた」という大切な存在だ。入選するまでは、自身の作り方がどこか見当違いなのではと長く悩んだ日々もあった。
 だがついに、今年1月の第5回陶美展や3月の東日本工芸展と大きな公募展で2回の入選が続いたことは、彼女にとって更なる転機となったことだろう。貫き続けた手法である鉄彩鉢は、鉄の粉を鉢に吹きつけ焼くもので、色の出方は焼いてみないと完全には分からない。「私の好きな幾何学模様に鉄で色づけするんです。焼いた後、どれだけの吹き加減で、なぜこの色になったのか考えるのも面白いですよ」と、説明する小原さん。
 彼女にとって陶芸は、「素の人でいられる存在。もちろん家族は応援してくれています。でも日々のちょっとした悩みから解放される時間であり、その時に私は母、妻、職場など、どの顔も持たない人間になれる」、そんな瞬間を与えてくれるという。そして今後については、「陶芸の精度を高める努力をしていきたいです。あと、以前に土気高校の前のカフェギャラリーで夫の撮影した写真、私の陶芸作品と2人展をしたんですが、また一緒に展示会をする機会が持てたら嬉しいですね」と微笑んだ。

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