穴窯に魅せられて20年

自分の考えの及ばない力が作用 穴窯に魅せられて20年
陶芸家 魚地貞夫さん

 1994年に陶芸作品の公募展である『全陶展』に初入選以降、19回連続で入選。都内ギャラリーでも個展を開催してきた陶芸家、魚地貞夫さん(77)。現在は一宮の自宅に『かずさ陶房&ギャラリー』を構え作品制作の日々を送っている。
 魚地さんがこよなく愛するのが、薪を使った穴窯焼成での作品作りだ。陶芸は、成形、素焼き、施釉、本焼きという工程が一般的だが、穴窯の場合は、成形乾燥後に釉は使わず本焼きを行う。100時間ほど続く窯炊き。その間に薪の灰が作品に降り注ぎ、高温で溶け、作品に様々な表情を与えていく。そんな穴窯での作品作りに魅了され20数年が経った。
 生まれは千葉市だが、戦災で小学校時代の一時期を、祖父宅のある現在のいすみ市岬町中滝で過ごした。その後、父親の転勤で県内各地を転々とし、中学で一宮へ移り、長生第一高校(現長生高校)から千葉大の美術科へ進学。卒業後は美術教師として東京都の公立中学校に勤務していた。
 大学時代は主に油絵を描いていたため、陶芸はほとんど門外だったそう。だが、教師となり絵画、彫刻、焼き物といろいろ教えていくうちに、「生徒に陶芸を教えるからには自分もちゃんと知らなければと、信楽に行って窯炊きから勉強しました」。その後勤務した中学校では陶芸クラブを立ち上げ、他校へ陶芸の技術指導に出向くことも多かったとか。ほかにも美術の教科書の陶芸に関するページや参考書の執筆なども行った。
 何故そこまで陶芸にハマったのか?「立体の面白さ、完成までのいろいろな工程、人の生活との関わり、創作の楽しさでしょうか。陶芸は土や火など自然のもので、火のおかげっていうのかな、自分の考えの及ばない力が加わり、工夫すればするほど面白い出来上がりになったり、そういうところが面白かったのでしょうね」と魚地さん。
 十数年前に土地勘のある一宮へ移り住む前は、横浜市の多摩プラザに工房を構え、教員生活のかたわら作品作りを続けてきた。「はやく教師を辞めて陶芸だけやりたかったんですけど、生活もあったからね」と笑う魚地さん。今は一宮の工房で作品を作り、年1、2回のペースで、静岡県沼津の知り合いの穴窯を借り作品を仕上げている。
 大小300点ほどの作品を自宅工房で素焼きし、それを沼津まで運ぶ。「大変ですよ。体力も気もお金も使います(笑)。10日ほど詰めっきりになりますからね」。とはいうものの、窯へ作品を詰める窯詰めは、「楽しいです。置く場所や置き方で焼き上がりが違ってきますから、炎や灰の流れ、燠の溜り具合などを考えながら詰めていく。それが工夫のしどころでいちばん面白いところです。人によっては窯詰めで作品の出来が決まるといいますから」と楽しそうに話してくれた。
 その後火を入れたら4~5日ほどは窯から目が離せない。昼夜を問わず薪をくべて1300度まで温度を上げていく。灰のかかり具合、炎の流れを見ながら、二人一組で寝ずに薪を投入する。その後1週間ほど窯の温度が下がるのを待っていよいよ窯出しだが、約100点焼いたとして、納得できる作品は30点ぐらいだとか。
「電気窯のように、プログラムを組んでスイッチオンでやるものではないですから。出来上がりを予想して詰めているんですけど、なかなか予想通りにはいかない」と魚地さん。でもその反対に予想以上の場合もあるわけで、「だから辞められないんでしょうね」     
 とはいっても、窯の中で中腰で重い壺を置いたりするのは体力的に大変だ。「本当はずっと続けたいのですが、これからのことを考えて、今自宅の灯油窯でも普通の焼き方ではなく、自分の特徴が出せるような焼き方はできないか、試験的にいろいろ試してみているんです。足腰が弱くなっても、自分の個性が出せて、納得できるような作品を作りたいと思い試行錯誤中です」。どんな形にせよ、魚地さんのダイナミックでいて優しさ溢れる作品はまだまだ作り出されていくようだ。

問合せ 魚地貞夫さん
TEL 0475・42・7034

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