『こだわる』ことで築いた陶芸人生

陶芸家 斎藤 登男さん

 長生郡睦沢町にある『夢楽工房』には、陶芸家である斎藤登男さん(66)の作品が溢れんばかりに並べられている。作品は湯飲みや花器、茶碗に至るまで実に様々なものがある。「陶芸を始めたのは20代の頃、勝浦で登窯、穴窯併用のもの、灯油窯などの窯を築きました。その後、睦沢に移ってからも穴窯、灯油窯も作りました。数十年続けて作り上げた作品の総数は把握できないほどです」と斎藤さんは話す。
 ろくろを回しながら土を形作る手つきはとても滑らかで、あっと言う間に茶碗や器を生み出していく。「とっくりの注ぎ口はこう狭めるんだよ」と楽しそうに話す斎藤さんの、陶芸の原点は小学生時代まで遡る。学校のグラウンドに粘土が出ていたので、ウサギなどを形作ってはたき火で焼いていた。が、「すぐに割れちゃったけどね」と笑うが、20代半ばで本気で陶芸に打ち込み始めると、いつの間にかその奥深さに引き込まれていった。
 1985年に勝浦で初めての個展を開くと、1992年秋にはテプコプラザ千葉にて作品展、工房での展示会を多数、そして睦沢町での焼き物教室を現在まで続けてきた。昨年には6月14日から9月7日まで、睦沢町立歴史民俗資料館特別企画「睦沢の芸術家」展に出品。20年ほど前にはコロンビアで陶芸を教えるために日本から派遣された経験もあり、「もうかなり前のことなのに、東日本大震災が起きた時には現地の人から安否を気遣うメールをもらい嬉しかったです」と懐かしそうにほほ笑み、「ただコロンビアは生活様式の違いで日常用いられる器は量産品の磁器が大部分を占めていて、陶器は低火度の絵皿とかお土産品が焼かれているにすぎないのが実情のようでした」と続けた。
 斎藤さんの窯は薪を使用し、温度の上がり状態で完成度が左右される。作品は土と薪の自然の素材を生かし、薪の量や質によっても出来上がりが異なるために、似たものはできても決して同じようにはならない。「火前といって、より炊き口に近い場所に置き焼いたものには、降り注ぐ灰の量も多く後ろにも流れるんです。熾火に埋まった作品は岩肌状になり、でこぼこが大地のイメージと重なり、花器だと野草が本当によく映えます」と作品を手に説明する。
 最近力を入れた作品は実に20年前に一度焼いたもの!焼きが足りないと思うと焼き直すこともあるほど、納得するまで力を注ぐ。また、電気やガスで焼く窯も増えている中、土や薪で表現できる自然釉などの味わいにこだわりを見せる。薪は知り合いから手に入れることがほとんどだが、長期間置いておくことはできない。木炭にしてしまえば腐らないので、炭にして保存する。木炭を利用して焼くと、より高温になる上に煙が出ないので一石二鳥の面もあるのだ。他にも、購入した土に地元睦沢町の土を混ぜることで、土の質にも力を入れている。
「多くの作品から1番を選ぶことは難しいけれど、焼きあがった時に予想外の色や形になっていると特に嬉しいですね」と言い、見せてくれたのは小さな花器が熱で溶けたもの。独特の形はインテリアとしても置けそうだ。「それでも、作品を見て落ち込むことのほうが7割です。ここまで続けてこられたのはやっぱり好きだからだと思います。作品を作っていると注文が来る。相手の好みやイメージしているものをくみ取るのは大変だけれど、嬉しいですよね」と話す斎藤さんが、次に取り組みたいのがオブジェである。すでに庭に佇む一体のオブジェ。眼鏡をかけた姿はまるで人間のようで、思わず話しかけたくなってしまうほど愛らしい。「水を飲む・花を生けるなど用途を無視して、なんでこんなものを作るのかっていう物が好きなんです。陶芸に一番必要なのは集中力。これからも、あんまり頑張りすぎずに続けていきたいと思っています。陶芸仲間と焼くことも最近はしていないのでそろそろやってみたいのですが、まずは窯の大きさをもう少しコンパクトに改造します」と語る言葉が、リズムよく回るろくろの音に合わせて工房に響いた。
 今春4・5月頃に工房での展示会を計画中。詳細は斎藤さんまで問合せを。

問合せ 斎藤さん
TEL 0475・44・1822

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