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更蝸(こうか)つれづれ スカーレットに思う
- 2020/4/16
- 外房版, シティライフ掲載記事
先月まで放送していた朝ドラの『スカーレット』。信楽焼の話で、楽しみに家内と見ることが多かった。テーマ曲に合わせ、ろくろの回転から始まり粘土から女性が現れたかと思うと、合体し再び粘土の塊となって様々な姿・形の表情を繰り広げる創作過程に感動し、また出演者が個性豊かに演じる爽やかさに元気を貰って、その日が始まっていた。
その陶芸つながりの話になるが、私には、知合いで備前焼をしている遠藤みどりさんがいる。若い時の遠藤さんは「和紙粘土人形」を作る会を立ち上げ、都内でグループ展など行なっていた。銀座の画廊で友人の藍染め展を訪問中、初老の陶芸家(備前焼)と出会い、陶芸の道に入ったと言われる。そして備前焼を本格的に学び、夫の定年を機会に、薪窯の出来る長柄町に移り住み、穴窯を築き創作活動を始めた。私は薪窯での美に以前から興味があり、彼女が備前焼をしていると知り、工房を何度か訪ねるようになった。その度に、遠藤さんの個性的な創作品を見ては唯々驚くばかりだった。 あるとき、「何かになる?」と彼女が大きな破片(写真)を見せてくれた。この創作物も他の作品とともに窯に入れ、昼夜休みなく一週間程の窯焚きをし、できあがったものだ。窯を開けたとき、遠藤さんは唖然としたかもしれない。肌には自然の織りなす備前焼の特徴がある。しばらく保管されていたものを預かり、ふと思いついて古木にそっと乗せてみた。なかなか良い景色になったので、『小宇宙』と呼び、置物にした。
遠藤さんは今でも「宇宙からの贈りものです」と大切にしている。私は朝ドラの中にも出てくる信楽焼の破片とともに、この作品に自然の成す美を感じている。
※スカーレット:やや黄味の赤色で少しくすんだ色。信楽焼の色の特徴でもある。
・相川浩:市原市出身。三井造船で定年まで勤め、退職直後の平成20年、自宅敷地にギャラリー・和更堂を設立。多くの郷土の芸術家と交流する。「更級日記千年紀の会」事務局担当。
TEL.0436・98・5251