更蝸(こうか)つれづれ スカーレットに思う

 先月まで放送していた朝ドラの『スカーレット』。信楽焼の話で、楽しみに家内と見ることが多かった。テーマ曲に合わせ、ろくろの回転から始まり粘土から女性が現れたかと思うと、合体し再び粘土の塊となって様々な姿・形の表情を繰り広げる創作過程に感動し、また出演者が個性豊かに演じる爽やかさに元気を貰って、その日が始まっていた。
 その陶芸つながりの話になるが、私には、知合いで備前焼をしている遠藤みどりさんがいる。若い時の遠藤さんは「和紙粘土人形」を作る会を立ち上げ、都内でグループ展など行なっていた。銀座の画廊で友人の藍染め展を訪問中、初老の陶芸家(備前焼)と出会い、陶芸の道に入ったと言われる。そして備前焼を本格的に学び、夫の定年を機会に、薪窯の出来る長柄町に移り住み、穴窯を築き創作活動を始めた。私は薪窯での美に以前から興味があり、彼女が備前焼をしていると知り、工房を何度か訪ねるようになった。その度に、遠藤さんの個性的な創作品を見ては唯々驚くばかりだった。  あるとき、「何かになる?」と彼女が大きな破片(写真)を見せてくれた。この創作物も他の作品とともに窯に入れ、昼夜休みなく一週間程の窯焚きをし、できあがったものだ。窯を開けたとき、遠藤さんは唖然としたかもしれない。肌には自然の織りなす備前焼の特徴がある。しばらく保管されていたものを預かり、ふと思いついて古木にそっと乗せてみた。なかなか良い景色になったので、『小宇宙』と呼び、置物にした。

遠藤さんは今でも「宇宙からの贈りものです」と大切にしている。私は朝ドラの中にも出てくる信楽焼の破片とともに、この作品に自然の成す美を感じている。
※スカーレット:やや黄味の赤色で少しくすんだ色。信楽焼の色の特徴でもある。 


・相川浩:市原市出身。三井造船で定年まで勤め、退職直後の平成20年、自宅敷地にギャラリー・和更堂を設立。多くの郷土の芸術家と交流する。「更級日記千年紀の会」事務局担当。
TEL.0436・98・5251

関連記事

今週の地域情報紙シティライフ

今週のシティライフ掲載記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…
  2. 【写真】教室の講師と子どもたち  JR浜野駅前と五井駅前でダンススタジオを経営する堀切徳彦さんは、ダンス仲間にはNALUの…
  3.  市原市不入の市原湖畔美術館にて、企画展『レイクサイドスペシフィック!─夏休みの美術館観察』が7月20日(土)に開幕する。同館は1995年竣…
  4. 【写真】長沼結子さん(中央)と信啓さん(右) 『ちょうなん西小カフェ』は、長生郡長南町の100年以上続いた小学校の廃校をリ…
  5.  沢沿いを歩いていたら、枯れ木にイヌセンボンタケがびっしりと出ていました。傘の大きさは1センチほどの小さなキノコです。イヌと名の付くものは人…
  6. 『道の駅グリーンファーム館山』は、館山市が掲げる地域振興策『食のまちづくり』の拠点施設として今年2月にオープン。温暖な気候と豊かな自然に恵…
  7.  睦沢町在住の風景写真家・清野彰さん写真展『自然の彩り&アートの世界』が、7月16日(火)~31日(水)、つるまい美術館(市原市鶴舞)にて開…
  8.  子育て中の悩みは尽きないものですが、漠然と考えている悩みでも、種類別にしてみると頭の整理ができて、少し楽になるかもしれません。まずは、悩み…
  9. シティライフ編集室では、公式Instagramを開設しています。 千葉県内、市原、茂原、東金、長生、夷隅等、中房総エリアを中心に長年地域に…

ピックアップ記事

  1. 【写真】第1展示室  人々の暮らしを様々な面で支えている人工衛星。ロケットで打ち上げられた人工衛星は地球の周回軌道に投入さ…

スタッフブログ

ページ上部へ戻る