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農業の物知り博士日本一
- 2016/4/15
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第66回日本学校農業クラブ全国大会群馬大会最優秀賞
茂原樟陽高校3年生 板倉 智貴さん
「知らないことを知るのが楽しい」と話したのは茂原樟陽高校生産技術科3年生の板倉智貴さん。昨年10月に開かれた第66回日本学校農業クラブ全国大会群馬大会の農業鑑定競技会農業区分で最優秀賞を受賞した。
主催した日本学校農業クラブ連盟とは農業科や総合学科で農業を学ぶ高校生の全国組織。全国大会は県大会や関東大会を経た代表校が参加する、いわば農業を学ぶ高校生の甲子園のようなもの。年に一度、クラブ員代表者会議、プロジェクト発表会、意見発表会や平板測量競技会などが同時に開かれる。そのなかで鑑定競技会に参加した選手は千人以上。畜産、林業、食品科学科、造園など9つの区分があり、作物、農業機械、栽培環境など農業に関する知識を問う農業区分にはおよそ180人が参加した。
競技会農業区分の問題は農業生物、種子、肥料、農薬、実験器具など広範囲に及ぶ。試験会場は体育館。実物の農業用具や植物が並んだ机上の問題を20秒以内に解いて記入する。ブザーが鳴ると素早く次の問題に移動する方式だ。わずかな時間に的確な鑑定と判断力を要するからプレッシャーがかかる。板倉さんは「緊張しました」と振り返る。
問題は40問。例えば、1)ダイコン、ダイズ、イネの種子が展示され、冠根を発生する植物の種子はどれですか、2)トマトのしり腐れ果の写真を見て、この生理障害の主な原因は何ですか、3)セントポーリア、トルコギキョウ、アスターがおかれた机では、栄養繁殖(種子ではなく根、茎、葉から繁殖すること)をする植物はどれですかなど。なかには機械機具や薬品に関する計算問題もあり、幅広い専門知識が必要だ。「図書館に行って調べたり、雑草や種子の実物を確かめたりと先輩と一緒に一生懸命勉強しました」と話す板倉さん。平日や夏休みも遊ぶ時間を惜しんで学んだという。1年生の1学期には40問中10問ぐらいしか解けなかった。だが、2学期には「優秀賞を狙えると思いました」というほど実力がつき、優秀賞を受賞した。昨年度は過去問15年分を解くなどさらに知識を深め、競技会に臨んだ。
大会当日は母親に「手ぶらでは帰らないよ」と言って家を出た。期待していた父親はケーブルテレビで大会の式典を見て結果を知り、誰よりも早く学校に受賞の報告をしたそうだ。「宣言通り盾を持って帰れました」と笑顔。父親も同校前身である茂原農業高校の卒業生。同じ競技会で優秀賞を取ったことがあるので「父親を超えられました」と素直に喜ぶ。
実家は白子町で祖母と仕事を持つ両親が働く兼業農家。トマト栽培を春夏と秋冬の2期作で行っている。植え付け、誘引、芽かきなどの作業があり、夏のハウスの中は40度以上になるという。今年は板倉さんが競技会の勉強で手伝えなかったから苗の植え付けが遅れ、いつもなら年末に出荷を終えるのに1月になっても収穫作業が続いた。「その分燃料代がかかりました」と心配する。「そこまでして応援してくれた家族に感謝しています」とはにかんで話した。
昨年度の大会では意見発表部門にも出場し、県大会で2位に輝いている。厳しい農業の現状のなかトマトの専業農家になるため、農業法人を設立し、6次産業にも挑戦したいとの意気込みを発表した。同町の栽培面積の広いトマト農家に実習に行って学び、学校で3段密植栽、年5作の周年栽培に挑むプロジェクトも試みた。板倉さんの住む白子町はタマネギの生産で有名だが、「トマトの生産量も増やしたい」と目を輝かせる。
将来は「大学に進学して栽培技術や経営やマーケティングを学び、亡くなった祖父が大切にしていたハウスを引き継ぎたい」と考えている。「小さな苗が育ち、大きな実を結ぶところにやりがいを感じる。人から「おいしい」といってもらえるのが嬉しい」。ところが、味については、「いつも食べているからわからない」と首をかしげる。「でも学校で作ったものよりおいしい」とか。
1月から農業クラブの会長になった。「自分ひとりで動かないで仕事を分担しリーダーシップをとりたいです」と張り切っている。好きな食べ物は「ラーメン」もちろん野菜のなかでは「トマトが一番好き」だそうだ。ちなみに問題の答えは1)イネ、2)石灰欠乏、3)セントポーリア。